パソコンって仕事を楽にするためにあるんじゃないの?

私がまだ社内SEとなる以前のIT企業時代の話し・・・

お客様に掛けられた言葉で今でも強烈に覚えている言葉がある。

あるお客様のところにパソコンと自社システムを新規で設置。

その後2か月ほど経ったある日、担当者の方に言われたある衝撃の言葉・・・

「あのさ~、パソコン入れたら仕事が大変になった上、帰るのも遅くなっちゃったよ。

パソコンってのはさ~、仕事を早くしたり、楽にするためのもんじゃないのかい?

当時の私はそのお客様の言葉に対して、”???”の状態。

そりゃ~・・・パソコンってのは仕事を辛くしたり、遅くするための道具じゃない。

そんなのは当たり前・・・

いったい何が起きてんだ?

自分にとってあまりにも強烈な言葉だったのでこのことはその後、ず~っと考え続けることになる。

考えに考え続け、ようやく自分なりの答えが出たのが3年後。

答えは2つ。

①担当者の方に、パソコンを使いこなすスキルがまだ身に付けられていなかった。どんなに優れた道具でも、使う人によって便利にも不便にもなるということ

②パソコンが導入されたことによって、できることが増えちゃって、結果、担当者のやることが増えちゃった

当時の私には、この2つのことが分からなかった。

効率化の名の下に、パソコン導入を決定するのは経営者。今までできなかったことができるようになることも、きっと魅力的なのだろう。

一方・・・実際に新しい機器を使うことになるのは現場の担当者の方。自分に使いこなせない道具を預けられたら、使いこなせるようになるまでには、辛く苦しい時間を過ごすことになるだろう。そして使いこなせるようになるまでのその間は、これまでよりも生産性は落ちるだろう。

経営者と担当者・・・両者の思いにギャップがあるのは当然のこと。

IT業者は機器を導入する際、どうしても決裁権者である経営者層にのみ、力を注ぎがち・・・しかし実際に機器を利用する担当者にも、配慮する必要があるのだ。

経営者には、担当者の方はしばらく大変な思いをするので、そのことを心に留めて欲しい。担当者の方には、しばらくの間大変な思いをすることになるが、乗り切ることができれば楽になる時が来るから、それまで我慢して欲しい。

そんな風に両者の立場に立ってフォローするのもIT業者の重要な役割なのだと、後から知ったのである。

社内SEとなった今でも、事あるごとにこの言葉を思い出す。

”パソコンってのはさ~、仕事を早くしたり、楽にするためのものじゃいのかい?”

パソコンで苦しんでいる人達を、今も見続けているからこそ、忘れられない言葉なのだ。